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Columnコラム

アクセシビリティ対応ツール?アクセシビリティオーバーレイ導入はちょっと待って

オーバーレイファクトシートの日本語版の公開に伴い、2024/03/14追記・再公開しています。

2024/03/14追記:オーバーレイファクトシートの日本語版が閲覧できるようになりました

オーバーレイ ファクトシート(日本語訳)

記事中に紹介しているオーバーレイファクトシートの日本語版が閲覧できるようになっています。ユーザーの生の声をぜひご覧ください。

アクセシビリティオーバーレイって?

導入すると画面上にウィジェットが表示され、直感的に文字の大きさや色味の調整ができたり、自動でページ構造を修正したり、読み上げ情報を提供したりできるツールです。これさえあればサイトの改修工事をすることなくアクセシビリティ確保ができそうですが、安易に導入しても大丈夫でしょうか?

アクセシビリティオーバーレイのメリット

ブラウザや端末の機能を知らなくても使える

支援が必要な人全てが普段使っているブラウザや端末の設定を変えられるとは限りません。設定画面を開いたり拡大縮小のショートカットキーを覚えたりしなくても、画面上でカスタマイズができるようになります。

アクセシビリティオーバーレイのデメリット

ユーザーの利用環境の邪魔をする

普段からブラウザや端末を自分に合うよう設定していたりその他の支援技術を使用していたりすると、ツールの設定や操作方法がユーザーの利用環境を阻害する恐れがあります。

ページを利用できなくなる

読み上げ機能は、見出しなど特定の要素だけ抽出して読み上げたり、リストやリンクなど要素の情報を読み上げたりすることで必要な情報を手に入れやすくなるものです。これらを利用できるように適切な構造でページを制作することが必要ですが、本来は見出しの要素が構造上は本文として作られているなど不適切な構造のページが多くあります。

イメージ図:本文やリストである要素がアクセシビリティオーバーレイの変換により全て見出し2になっている。

そして、そのページの構造を自動修正しようとしても文脈に合った修正をされるかはツールの判断次第となるため予測できません。イメージ画像のように本文など本来の構成とは違った要素に書き換えられることも多くあり、目的の情報までたどり着きにくくなってしまいます。他にも画像や映像などテキスト以外のコンテンツの代替情報が提供されないなど、機能面としても十分とは言えません。

また、キーボードだけでページ内を移動する際に画面上のツールにフォーカスされたり、ツールからの通知で操作が邪魔されたりと、今まで利用できていた人たちすら利用できなくなった事例も多数あります。

障害当事者の72%がツールに不満

円グラフ:「Web ページのアクセシビリティの変更を自動化するアクセシビリティオーバーレイやウィジェットは効果がありますか?」という質問に、「全く役に立たない・あまり効果的ではない」という回答が72%を占めている

2021年WebAIMによって行われたWebアクセシビリティ実践者の調査によると、アクセシビリティのために導入されたツールに対して、障害当事者の72%がまったく役に立たない、またはあまり効果的ではないと評価しています。効果的であると評価しているのはたったの2.4%でした。Overlay Fact Sheetにはアクセシビリティオーバーレイに対する当事者も多数掲載されています。

導入のみでアクセシビリティ確保は非現実的

ツールを導入するとそれだけでアクセシビリティを大切にしているように見えるかもしれませんが、アクセシビリティ確保が必要な理由はあらゆる人が情報を手に入れられるようにするためです。導入したことで利用できなくなる人が増えてしまっては意味が無いですよね。

今後アクセシビリティが広まるにつれて、国内でもこういったツールを使った対策が増えていくことを懸念しています。アクセシビリティの改善は一朝一夕ではできませんが、それだけ時間をかけて利用できるお客様を増やしていくことには大きな価値があります。今後もしアクセシビリティオーバーレイを見かけたときは、一度立ち止まって利用するお客様のことを考えてみてください。